IP Meeting 2006 を振り返る

では、先週を振り返るシリーズです。まずIP Meeting 2006

午前中のセッションで面白かったのはオペレーショナルセキュリティ。IIJ/TelecomISACの斉藤さんとNTTcom/JAIPA法律行政部会 の甲田さん。強烈な印象となったのは、通信の秘密にはありとあらゆるものが包含されるということ。
例えばIPネットワークでは当然ながらパケットヘッダからdestination addressを拾ってルーティングするわけですが、これでさえも通信の秘密に含まれるという解釈がまず最初にあって、そこから有罪性の阻却を行って行くということらしいのです。OB25Bとかそういう技を議論する前から、もともと駄目なんじゃん、みたいな。
どうにかもう少し、現実に折り合いの付いた法律になってくれるとありがたいですね。


午後は講演3つにパネルディスカッション。
最初は、元マイクロソフトというか、今慶応DMCに移られた古川享さん。放送通信融合のようなテーマ設定でしたが、中身は「今IPでここまでできる」。コンサート音響の世界でも、信号そのものはともかくとして制御系はほとんどIPでやられている、とか、男たちの大和ではフルデジタルプロダクションとなって、取ったはなからスタジオに画像が送られる、とか。夢があってよかったです。
2つ目はKDDI渡辺文夫さんで、KDDIのネットワークとサービス展開の話。これも、ドコモの話と一味違って面白いんですね。
3つ目は僕自身が、「インターネットの真の国際化とは」というテーマを、江崎さんからいただいて、うんうん唸った結果、直後のパネルの枕になるような話を、ということで、最近のインターネットにまつわる話で徒然なるままに思いを巡らせて、見つけた問題点や解決策へのヒントなどをご披露。つまり、

  • 他のネットワークとの棲み分けと連携を意識する。
  • インターネットの本質はマルチメディア性やコンテンツのリッチネスにはなくて、グローバルに anyone-to-anyone の自由な通信を実現することにある
  • 堅牢性,セキュリティ,著作権をマトモにする
  • グローバルに共有された技術

あたりがヒントになるんじゃないか、と申し上げました。


次のパネルでは、チェアに後藤茂樹さん、パネリストにIIJの浅羽さん,総務省の谷脇さん,JANOG会長近藤さん,NTT研究所外山さんもいらっしゃるなかで、Internet2.0というとすると何をどうすればいいのか、というテーマで。実はこのパネル、事前にメーリングリストでいろいろとディスカッションして当日に至っていて、浅羽さんが「やっぱり原点回帰だ」とおっしゃりながら、相当原理主義的な論を進めていらっしゃったのです。いくつかとても素敵なキーワードがありますが、これはここでお話しするのは控えておきます。やはり浅羽さんに最初に使っていただかなくては。

僕の枕は結構有効に作用したのではないかと思います。そうは言ってもやはり、絞りのないテーマなので、シャープな議論はなかなか難しかったです。
僕が、P2Pファイル共有は技術としての有効性は認めるとしても、共有するだけで実際に使うかどうか分からないファイルのためにトラフィックが発生しているわけで、そんな無駄を省いていけば広帯域技術の必要性も緩和されるんじゃないか、と言ったんですが、そこからP2P技術の是非論にも行ったし、
グローバリズムの文脈から、南北問題−格差是正−国際公共政策 みたいな方向にも行ったし、それから最大限経済合理性の枠の中で処理するべきだ、でもユニバーサルサービスみたいなコンセプトで、市場の失敗というか、経済原理で解決できないところは公共政策で、みたいな話も出てきました。
グローバリズムの中でも、国家の法秩序があって、全てがシームレスに扱えるものじゃない、という問題提起もありました。

月並みながら、やっぱりそういう感じかなと思うまとめとしては、絞りがないながらインターネットの本質を見つめなおしながら、いろいろな示唆に満ちたセッションじゃなかったかと思います。