APNIC26ミーティング

maem2008-09-01

8月最終週は、APNIC26ミーティングニュージーランドクライストチャーチで行われた。
写真は今回のノベルティ。.asia謹製コンパクトサイズのUSBメモリ(それも4GB)と、Hurricane Electric謹製、リアル枯渇時計。他に、APNIC謹製のフリース(なんたってクライストチャーチは冬ですから。)と雨傘(なんたって雨続きで役に立ちました。)

今回、何が特別だったのか知らないのだが、いつもよりも1日長い会期。普通のAPNICミーティングだと、火曜日にECミーティングと他EC関連のミーティング,水曜がPolicy以外のSIG,木曜がPolicySIG,金曜がAPNIC Member Meetingということになっているが、ECミーティングが月曜。火曜水曜にいろいろとプレナリセッションが入っていた。

詳しくはミーティングページからミーティングレポートを見ていただくとして、サッと雑感を。

IPv4 in 2015

火曜日オープニングセレモニーの後。枯渇関係で登壇してねー、と担当者から言われたのは3ヶ月くらい前だったが、詳細が分かったのは、実に前日だった。今までにやったことのない「hypothetical」という形式のセッション。担当者曰く、議論喚起の一つの方法論らしいが、パネリストを現実世界の重みから解き放つ(?)ため、全員が仮想の役柄を演じる。とは言っても、「日本」の「JPNIC」のマネージャ、と言う現実を、「アニメ国」の「AniNIC」のマネージャにする、ということなので、まー、実名で言えないことがちょっと言いやすくなる、くらいでしょうかね。
みんなそんな感じの役回りになって、一番面白かった役柄は、Geoff Huston。APNICを離職して、OECDのチーフエコノミストになった、という設定。なんだかあり得そう。これだけ実在の組織だったので、良くセッションの全貌を理解しないとある人から、「GeoffってOECDに移ったのー」なんて後から聞かれた。。。まぁ、本当に移るってことを考えるとあんまりあり得ないよな。やっぱり。

ただ、あんまりちゃんと喋れなかったな。プレゼンは予め何をどういうか考えられるけど、こういうセッションはシナリオが一応あるとは言っても、基本的にフリートークだから。

"IPv6: Does it work for you?"

IPv6ネタを満載にしたセッション。日本からは、JPNICの奥谷と、NTTコミュニケーションズの吉田さんが登壇。奥谷は、日本のIPv4アドレス枯渇対応の現状を、連携活動を主軸にして。吉田さんは、Carrier Grade NAT採用に至る考え方を示す発表。
どちらも、想定して訴求するポイントがちゃんと示された発表だった。だからそこそこ質問やコメントが入るかと思いきや、全然なかった。もっともっと観客を引きつけるやり方が必要だと言うことかなぁ。。

NIR SIG

いつものNIR SIGなんだけど、今回はポリシーWGから日本のPDP(=Policy Development Process)に関して説明してもらったのが、キーポイントかと。

発表は、盟友、橘俊男から。この人の英語発表を聞くのは初めてなんだけど、喋りは得意技+英語も怖くない ということで、実に堂々とした発表。英語も言いたいことを端的に表現して、聞き取りやすいかった。

本人はそれでも苦手意識が有ると見えて、最後に、「拙い英語で済みませんでした」とか言ったんだけど、もしこの発表にアドバイスをするとしたら、この最後の文句だけが全く持って余分。APNICミーティングに出てくるノンネイティブの中では分かりやすい部類の上手な発表だったし、たとえどんなに拙くても、こういう文句は全くの「蛇足」である。僕も英語で喋ることには苦手意識があるので、最初の方はこういう文句を口にしていたけど、それで何か良いことがあったことはないし、悪いことには「ううん、上手だよ、全然問題ないよ」としつこくフォローされること。そういう仕事にしばらく慣れた後に、「慣れたとは言っても、未だにやっぱり英語で言うこと伝えるのは苦手意識があってね」とか微妙なことを言おうとしても、結局同じような顛末になる。だから、もう一切口にしないことにした。
日本人がそういう性格だと言うことはよく知られているし、何よりも、多少拙かろうが、発表してくれたり、意見を言ってくれることをとても期待されている。そうでなければ、なんだか先進的技術を持った国とは聞いているけど、何も喋ってくれないし、尋ねても笑顔だけを返す不気味な国、と言った印象だけが残るのだ。

この発表は良く他のNIRからも理解され、その挙げ句に「なぜ日本はそんなにコミュニティをinvolveすることに成功しているんだ?」という質問がでた。これに僕は答えようとして、

コミュニティを巻き込む流れは、RFC2050がdraft-hubbardだったころに始まっていて、ip-usersメーリングリストにみんな集まっていろいろやり始めたんだ。長いことやっているからってことだと思うけど、詳しくは分からない。

みたいなことを答えたら、そこにいたRandy Bushが、

いや、日本人はよほど特殊なんだと思うよ、みんなを助け合うってメンタリティが発達しているような気がする。ほとんど変態だよね、その変態なところが好きで住んでるんだけど。

ですと。いや、正直いって難しい質問です。

Policy SIG

今回ポリシーSIGは、10本のプロポーザルを抱えていて、丸一日がかりになってしまった。
特に印象的なものをいくつか。

アドレス移転ポリシー提案(prop-050)

日本のコミュニティでは、賛成する人もいるものの、大勢としては懸念が多すぎて通ってもらいたくない、という感じ。JPNIC事務局のポジションもそこにある。ポリシーSIGの雰囲気は、何人か特定の人、それも先進国の人が、移転を可能にした後の影響に対する懸念から強い反対意見を示していたが、コンセンサスに向けてチェアが挙手を求めたところ、そうとう多数の人が賛成に手を挙げていた。正直言ってヤバいと思って、日本勢を中心に負けずに手を挙げると、日本以外からも何人か反対に手を挙げ、コンセンサスには至らなかった。
しかし、コンセンサスに至る勢いは相当大きかった。この提案もこれが3場所目で、次また同じような議論のフェーズを繰り返すことはできないだろう。この半年で、議論を尽くして良いの悪いのはっきりさせなければならないと思う。

カウントダウンポリシー改(prop-055)

IANAの在庫が/8*5になったら、/8*1ずつ各RIRに分配してしまう、と言う提案。2007年3月の初提案のあと、LACNIC/AfriNIC提案とのマージを経て、やっとコンセンサスに至った。これで、決まっていないRIRはRIPE NCCだけになった。こちらも、Address-Policy WGのラストコール期間が終了し、チェアの裁定を待っている状態。APNICのラストコールを無事に終え、RIPEでもコンセンサスと固まれば、Global Policyとして実装するフェーズとなる。
これまでもGlobal Policyはいくつか通っているが、実態運用をポリシーに固めるようなものばかりだったが、これが、意味のある方針を通したものとなる。

LIRの歴史的PIアドレスを利用状況を確認する提案(prop-066)

日本では懸念が大きかったので、それを表明もしたのだが、あっさり通ってしまった。

APNIC Member Meeting

いつも通りのAMMだが、これまでと大きく違うのは理事会議長(僕です。)が司会したことだ。しゃしゃり出るのが好きだからそうしたわけじゃなく(嫌いじゃないけど)、定款に「総会の議長は理事会議長が務める」と書いてあって、定款遵守度を高める方針の中でそう変えることにしたのだ。
やっていることは単なるMCなので、そんなに難しいことはないけど、Paul Wilsonがやっているような立て板に水の流れるような司会はできないなぁ。ボクトツに、次はこれ。誰それさんお願いしまーす、を最後まで繰り返すような。。