進化するネットワーキング 情報経済の理論と展開

進化するネットワーキング 情報経済の理論と展開

進化するネットワーキング 情報経済の理論と展開

池田信夫さんのブログ http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/44b57816f241cc02a07b827d79934e76 で知り、即買いしてやっと読み終わりました。


このdetail表示だと帯が見えないんですね。帯には「インターネットバブルはだった。」と書いてあります。確かにそういう表現が書中に出てはきますが、枝葉なんですよね。何でしょうね、こういうのって。こういう釣り文句って、むなしくならないのでしょうかね。


池田信夫さんも

林氏の『ネットワーキングの経済学』(1989)の第3版。第1部が旧著の改訂版、第2部がWeb2.0など最近の現象を扱っている。第1部の主要なテーマが「ネットワークの外部性」による「ひとり勝ち」であるのに対して、第2部は「ロングテール」などのニッチな世界をテーマにしているが、両者は実はベキ分布という同じものの表と裏である。そのへんのネットワーク理論のおさらいも、まとめられている。

動きの激しいこの世界で、初版から17年もたって第3版が出るというのは、きわめてまれなことだ。それだけ、著者の着眼に先見性があったということだろう。

と絶賛なさっているのですが、この本は是非モノです。
第一版の「ネットワーキングの経済学」が1989年,第二版の「ネットワーキング―情報社会の経済学」が1998年の著作の第三版、前半第一部が旧著の改訂版なのですが、第二部を書き込むために圧縮するためということも含めて、現在的な観点から全面的に見直されています。

第一部のタイトルが「ネットワーク外部性」となっています。外部性という概念は経済学のもののようで、この「ネットワーク外部性」という言葉遣いも今の今でもまだしっくり来ないのですが、ネットワーク以外でも技術規格,コンピュータのOSなど、「大勢で使えば使うほど価値が増して行く」性質を指しています。この「ネットワーク外部性」を、QWERTYキーボードの普及や米国を中心に各国の電話網を実例に解説し、そこから相互接続の料金政策,ユニバーサルサービスやネット中立性の問題まで論じ、通信政策の今日的な課題を勉強する上では、引用されている文献へのリファレンスも含め素晴らしくまとまっていると思いました。第一部は第一版第二版の著者である林紘一郎さんと、田川義博さんによるもの。

第一部がインフラを論じたとすると、第二部は湯川抗さんによって、社会ネットワーク理論的な意味合いの「ネットワーク」が論じられます。今度は、Web2.0でありロングテールであり、ワッツでありバラバシです。

一部と二部は、池田信夫さんがおっしゃる「ベキ分布の表の裏」という言い方は的確だろうと思います。一部==インフラはトールヘッド*1を形成するための力学で、二部==社会ネットワークは、ロングテールを読み解き、知識を紡ぐためのものの見方、という感じでしょうか。この2つがひとつの本の中で語られるのは、どこかに違和感のかけらみたいなものが残る気もしますが、示唆深いと思います。今後両者の関連を学び発見していくのは楽しみです。

両者だいたい同じくらいのページ数が使われているのですが、さすがに17年3版にわたって、その都度新しい文献や成果もさらいつつ磨かれてきた第一部は、重量感と迫力があります。買ってよかった。

*1:long tailに対してtall headだと言うのは良い対応だと思う反面、本当に正しいか全く自信がない。