IRRに関して整理したこと

JPNICでIRRサービスの事業化をやろうとして、機関決定のためのドキュメントを作成中なのだが、その副産物として今まで生半可でちゃんと整理できていなかったことの整理ができつつある。
 
歴史を紐解くに、IRRの原型となったのは現在も運営が続いているMerit NetworksのRADB 。もとはといえば昔インターネットのバックボーンを担っていたNSFNETに対するアクセス許可のためだったので、結果的に広くあまねく網羅的にオブジェクトを持つIRRとなった。現在ではNSFNETは消滅したが、NSFNETと同様に経路情報のauthorizationを行いたいISPにデータベース参照サービスを提供している形となっている。
RADBが2000年体制でmaintainer-objectに課金してIRRdを配るようになる前、当時のMCI, ANS, CA*net, RIPE でミラーしている体制があったが、これらのなかに既にタイプの違いが出てくる。
当時のMCI(今のSavvis)は顧客経路の受け入れを含む広告経路の管理のためのPrivate IRRというのが今に至るまでその設置意義である。RADBとある意味似ているのは、DBに登録しないと通信可能とならないことだが、RADBはNSFNETへのアクセスするインターネット上のあらゆる対地が登録されるのに対して、MCIはMCIからインターネットにアクセスする顧客対地が登録されるため、含まれるオブジェクトの範囲も違えば、実現される認証の方向性が正反対である。
RIPEはレジストリデータベースをIRRとして開放するという方向性で最初から設計されていて、RADBのように網羅的でもないし、MCIのようにISP境界で限定的でもない。RADBやMCIのように参照は自家用途ではなく、IPアドレスやAS番号の源泉としての高水準の真正性をIRRとしてもあまねく提供しようとする。この意味でレジストリベースのIRRは公共的意味合いが強い。
大別するとIRRは3つに分けられる。

  1. 独立網羅型 - RADBのように網羅的なデータベースを構築し、第三者の参照用途に提供する。
  2. ISP型 - SavvisやVerioのように自分の顧客のオブジェクトを登録し、自分のネットワークの経路制御管理など自家参照目的で利用する。
  3. レジストリ型 - IPアドレスとAS番号の源泉であるインターネットレジストリがその高水準の真正性というメリットを、第三者の参照用途に提供する。

この3つをインターネットを網羅するという観点で比較すると、
ISP型の場合、Tier1 ISPが現在のBGPルーティングのトポロジと同様のピアリング的な感覚でミラーリングを行うことで、IRR群としての網羅性を確保できる可能性があり、
レジストリ型の場合、全RIRがIRRを提供し、相互にミラーリングを行えば完全な網羅が可能となる。
独立網羅型はこの2つに比べて網羅性を維持するのが困難だが、RADBはその歴史的経緯で既に高い水準の網羅性を確保している。
 
整理しただけで結論はないんですが、識者の方々間違いなど見つけたら突っ込み宜しくお願いします。