IETFフォーラム終わる

3/29の日記で書いたように調整中であったIETFフォーラムが完了しました。「無事完了」でも「大盛況のうちに完了」でも、いろいろと書けるのかもしれないですが、なんかそう単純な話でもない感じがします。個人的にはとても面白くなったけど、今後に向けて課題も山積だなぁと思いました。

IETFフォーラムの開催趣旨はこちら。今回のプログラムはこちらです。

(以降お歴々のお考えを勝手に要約していまして、甚だ不正確である可能性が多々あることを予めお詫びしておきます。)

高橋徹さんがおっしゃって、お考えになっていることはこういうことではないかと思います。

IETF報告会を始めた当初はIETFにおける日本人からの貢献が全くない状態だったが、mohtaさんや江崎さん,KAME周辺の皆さんのご尽力で相当日本人からの貢献が多くなったが、その間にいつの間にか韓国や中国が相当勢力を伸ばしてきた。村井さんやいとぢゅんさんがIABにいたが今は途切れてしまっているし、そういうフィールドで活躍できる人材を増やして日本が世界に対して果たさなければならない役割を全うして行く必要がある

一方江崎浩さんはこんな感じではないかと。

標準化や技術開発の段階で、日本の競争力はあまり高くないのではないか。欧米諸国のほうが標準化に対して大きな時間や工数を掛けてフォローしているが、日本ではできるだけその工数を削ったり、事業者からの要求仕様だけに従っているようなところはないか。実際に相互接続実験をしてみるとそういうひ弱さが見えることがしばしばある。技術開発力の醸成という観点では標準化プロセスに対する十分な関与とフォローだけでなく、テストベッドや相互接続実験,運用現場からのフィードバックなど他のセクターとの連携も不可欠であろう。

じゃぁ、JANOGみたいなところはどういうか考えるというと、

運用現場としてはどんなに優れたプロトコルだろうがポリシーや政策だろうが、使いにくければしょうがない。機械が国産なのか海外のものなのかも日本の国際競争力も、直接的には無関係である。国際連携は、例えば他のNOGと連携することでセキュリティ懸念を低減したりコントロールするという観点では小さくない関心がある。

って感じなのかなぁ。

ちなみにIETFフォーラムの日の晩にはKAMEプロジェクト完成パーティというものがありまして、その場でKAMEプロジェクトの意義として村井純さんがおっしゃっていたのは、

インターネットの発展は、多くのプロダクトに採用された4.2BSDの参照ソフトウェアなしには考えられない。優れたプロトコルスタックの実装が存在していてそれがフリーで入手可能であるからこそそれを核にしたプロダクト開発が推進できる。4.2BSDに対しても日本から相当のコントリビューションを行ったが、「米国のものを単に日本に持ち込んだ」としか言われない。KAMEでは一線級のディベロッパーを各社から確保し、高品質の実装作り出すことに成功した。これはBSDの本流に統合するときにも、平行して開発していたUS,フランスのコードをKAMEに統合することになったほどで、これは純粋に「日本が作ったもの」と誇っていいはずだ。

と言ったことだと思います。

今回のIETFフォーラム、いくつかやってみて初めて「こうなるのか」と分かったことがあります。

  • 冒頭に後援をいただいた総務省経済産業省からご挨拶いただいたのは、悪く言おうとすると「仰々しくて権威主義的だ」なのかもしれないけど、いままでのインターネット業界の流れを踏まえて眺めると、「官も関心を持ってくださって一緒に取り組んでくださるのだ」というメッセージになって、あるべきものであったと思う。
  • パネルあれだけ事前コーディネーションなしにやるのもなかなかないけど、ライブな感じでよかったと言っていいし、まさにこれからのIETFフォーラムの活動をどう考えるべきなのかということを、会場と一緒に議論ができたように思う。
  • 「国際競争力」「業界の横串的協調関係」「標準化・相互接続における諸問題」のような、一見バラバラなコンセプトが持ち寄られていながら、実はそれらの本質というか必要とされるものは相当似通っているということがあぶりだされたような気がする。

最後のポイントの解決に重要なことは、各企業がこういうことの重要性を認識し、矜持を持つことではないか、またこういう活動を通じてその重要性を理解していただく努力や、必要となる仕組みづくりをやって行くことなんじゃないかと思います。

事務局のご尽力で既にアンケートの集計が終わっていましたが、アンケートにもサポートの表明だけでなく、僕も気になっていた問題点、「総論が多かった」「ガバナンス方面だけ関連性が少ないような」「IETFという名前からは想像しにくい内容だった」と言ったご意見が上がってきています。
こういう活動がどうも重要そうだということは大半の方が思っていらっしゃったように思いますが、今後どう進めて行けばいいのか、問題は山積みなのです。業界団体各組織においても、このフォーラムに永続的に関わって行く上での正当化を今からやらないといけない状態なんですね。恐らくその辺、今回の議論を元に、チャーターを磨く作業からやらないといけないということだと思います。
年に2回やるとしたら、あっという間に半年ですからね。気を引き締めてやらないといけません。