情報セキュリティ - 理念と歴史

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情報セキュリティ - 理念と歴史 という本、水越一郎さんから「超お勧め」というお声をいただき、即買いしてみました。
著者は名和小太郎さんで、インターネット上の知財権関係の著作も多いのですが、本書によると大学は物理学科卒。生産管理部門からメインフレームコンピュータの管理部門に移られ、情報化の歩みを一貫して取り組まれた後、コンピュータに関する法学の専門家のような活動をなさっています。


アンチウィルスを入れるとかそういう実際的な技術を意味しているわけではないのですが、コンピュータや通信の黎明からの歩みを、ご自身の経験を通じて丹念に検証して、情報通信というものの中でどのようにして権利が取り扱われ、守られてきたか、主に米国法を中心に論じてあります。

「国際通信は国家主権だ」という言い方は良く聞いていましたが、ITU憲章に「国際通信を切断する権利を有する」と定めてあるとは、恥ずかしながら知りませんでした。そもそも黎明のころの電気通信は国内に閉じたもので、国をまたぐ場合には手書きで渡されていた、なんてところから書いてあります。その頃の国際通信というの政府外務用途がほとんどで、次に鉄道などの運行用途が少しずつ入ってくるといいますから、勿論全ての条件が違うし、無線の普及によって様相が全く変わったとはいえ、インターネットという考え方が、そういう視点から見るとやはりアナーキーなものであるということが良く分かります。

いや、こりゃ必携でした。帯にもありますが「他の類書なし」でしょう。情報通信基盤の上で権利やルールの枠組みを考える必要がある全ての方にお勧めします。そういう問題の「そもそも」を全て解き明かしてあるような本です。