IGF日記1日目

maem2006-10-30


始まりました。IGF
まず、Webとリモートパーティシペーションがとても充実しています。速記の即時投影,Web公開,Webcast,SMSやe-mailで質問やコメントを寄せられるなど、APNICミーティング並みです。(密かにAPNICミーティングを自慢しています。:-) )現場にいなくても相当内容を追えると思います。
また、国連の会議ということもあって、同時通訳がつきます。数ヶ国語をカバー。速記は通訳を介して英語で取られます。残念ながら日本語はカバーしないんですけどね。フランス語,アラビア語スペイン語あたりは質問者も利用できるのですが、英語がハブ、つまり、any-to-anyにフランス語がアラビア語になるとかってことはないと察します。

http://intgovforum.org/ です。既に2日目までの速記録が公開されています。

1日目

メイントラックは午前3時間・午後3時間という体裁。3時間の会議は相当長い感じがします。
午前中はオープニングセッション。VIPのスピーチの羅列です。午後は"Setting the Scene"と称されたセッションで、IGFのテーマ全体を総括的に扱うパネルで、各界からそうそうたるメンバーがパネルに並び、Ken Cukierというエコノミスト誌の記者がコーディネータとしてパネリストの発言を組み立てていきます。
午前は原稿が用意してあって基本的にはそれを読み上げるだけ、午後はKenの手引きでダイナミックに進むので午後の方が面白いんじゃないかと思われるところ、実際そういう感想も多かったですが、
午前は練り上げた原稿でまとまった考えが呈される、午後は逆にちょっと発散気味にすすんだということもあって、僕は午前の方がいろいろと考えさせられることが多かったです。
例えば、ホストとしてギリシャの運輸通信相や総理大臣がスピーチするのですが、そういう人たちのスピーチの中にも、9月のICANNとUS商務省の契約更改を祝福する内容あったり相当インターネットの動きを読み込んだ内容が入っていましたし、マルチステークホルダーアプローチで情報社会のポリシを考えていかないといけない、といったWSIS/IGFの精神を真芯で捉える内容が、言葉巧みに、たくさん織り込まれていて、ジャブのように効いてきます。
インターネットコミュニティの住人としては、インターネットや他のICTに関して社会がどれだけ期待してまじめに考えているのかというのを見せ付けられるような気がしました。
その最後の最後に、Vint Cerf と Bob Kahnのスピーチです。Vintのスピーチで一番印象的だったのは、「インターネットは、distributedな、過去に例を見ない品揃えを誇る archive だ」というくだり。なんとなくgoogleっぽいまとめ方ですよね。Bobのスピーチでは、「30年前に『この冒険を始めたとき』にも単純に技術屋だったわけじゃなくて、『critical social process』を作ってきたんだ」というのがガツンと来ました。インターネットというのは多分に社会的で、それが今の成功を生み出していると思いますが、そういうイメージを裏打ちする一言でしたし、「今の技術だけでインターネットを語ってはいけない、これから出てくる技術も包括するんだ。だから研究フェーズからのインプットは永遠に必要だし、次の世代も冒険し続けないといけないんだ」という言葉もなんだか胸が熱くなりました。

一日目ランチ

今回大勢の日本人が参加していますが、その中にジュネーブ駐在の通信社特派員の方がいらっしゃいまして、その方と一日目のランチをご一緒に。それも、レストランが混んでいたのでとっぷりと。
ジュネーブ駐在と言ってもお一人らしく、お一人でジュネーブで起こるあらゆることをカバーしないといけないらしいです。そういうわけで、IGFなんて相当分かりにくいもので、僕からみた俯瞰を一通りご披露することになりました。逆にその方からは、国連というところがどう動くのかを教えていただくことになったわけです。
曰く、国連がやることというのは安全保障とかありますが、多分に発展途上国支援に尽きる、ということのようです。
確かに、国際的公共政策、とか思うと、先進国だけに作用することは打ち出しにくいわけで、どうやって途上国を支援して追いついてきてもらうかというところに焦点が当たるのは分かります。

発展途上国にしてみれば、「先進国だけいい思いをしてずるい」と思いがちなんでしょうし、ルール作りを考えるときにも「置いてけぼりにしないでね」といいたくなるんでしょう。インターネットコミュニティが、インターネットを動かし続けるために良かれと思っている体制も、「いや、あいつら騙そうとしてるんじゃないか」と訝しげに思う、と。

だからWSISでもBRICs付近を中心に「米国覇権体制反対・国連主導で」という言い方が出てきて、これはインターネット以外にも枚挙に暇がなく、言い出したらどんどんどんどん深みにはまるというか、やらなくてもいい険悪な果し合いをやる羽目になる、と。

イランのとある方が、何かにつけてこの文脈を持ち出すことで既に有名で、午後のセッションでも質問に立って、ご多聞にもれずそういう文脈を持ち出したのですが、コーディネータのKenはもの凄く積極的に、あからさまにと言ってもいいくらい、この文脈を拒否していました。前のエントリでICANN/RIRs/ccTLD陣営がこの文脈を避けていることは書きましたが、これも上のような観察から出てきているんだということが良く分かりました。

とはいっても発展途上国支援は欠かせない、となると、"Internet Governance for Development"というスローガンになるんだ、という構造であることじゃないかと思うに至りました。

また、これも前のエントリで書いたように、対話ばかりで何か成果があるのか、という問いに対して、ここでは対話に徹して、各自がアクションを起こせる場に持ち帰ってアクションを起こすというのが成果なんだ、という観測に対して、この特派員の方は否定的な観測。何も起こらないんじゃないですかねぇ、と。これに対しては、ICTは最たる例ですが、技術の急速な進歩(特に、情報技術は社会の構成要素間の情報交換を飛躍的に変えますから)に太刀打ちできる政策推進は、もはや今までのやり方じゃ実現できないんじゃないか、ここにも何らかのイノベーションが必要で、きっとIGFはそのイノベーションをやろうとしている、ここを信じて進めないといけないのでは、とお話しました。

一日目・午後

IGFはマルチステークホルダーアプローチということで、あらゆるセクターの方々がパネルに並ぶセッション。ランチまでの印象の方が強かったので、午後に関してあまりここで書くことはしませんが、若干発散気味。ただ、概論として、それぞれの方々の問題意識を呈しておくことは重要なんだろうと思いました。multistakeholderism、という新語も登場しましたが、無理なく浸透していたような気がします。