Vint Cerf かく語りき

IPv6styleに掲載された、Vint Cerfが9月に来日したときのインタビュー記事、
ちなみに3回分載で
http://www.ipv6style.jp/jp/20060929/google.html
http://www.ipv6style.jp/jp/20061010/google2.html
http://www.ipv6style.jp/jp/20061024/google3.html
と並んでこれで終わりかと思いきや、このインタビューを振り返って、原稿お越し*翻訳をご担当した黒坂さん id:txk ご自身が寄稿なさっています。
http://www.ipv6style.jp/jp/20061107/kurosaka.html
Vintという先駆者がインターネットをどう捉え、どう考えているかが、良く表されていると思います。

 たとえばパケット交換の構造について、サーフ氏はハガキのやりとりを例に説明した。このアナロジー自体は、インターネットの教科書をひもとけば必ず書かれている内容で、有り体に言って目新しいものではない。しかし会見での発言を丹念に聞いていると、なぜ同氏(とボブ・カーン氏)がそれを構想し、実装するに至ったか、すなわち「インターネットの設計思想」がおぼろげながら垣間見えた気がした。単なる技術的解説を超えた、インターネットを作った人にしか表現できない言葉の重みが、そこに感じられたのである。

これは納得ですね。先週のIGFで、VintとBobの講演を聴いたわけですが、まさにこの通りです。

特に取り上げるとすると、

 サーフ氏自身はこの現象を、サービス・オリエンテッド指向、あるいは顧客起点指向という視点で捉えていた。それは同氏が現在所属するGoogleのサービスコンセプトの解説に多くの時間が割かれており、またその中で「顧客がサービスを選択し、その起点となること」の重要性を再三説明していたことからもうかがうことができる。そして同氏は、ユーザーの利用スタイルの変容を伴っている以上、単なる一過性の現象ではなく正しく社会変革を起こしつつあること、またこの変革の方向や力強さが当分変わらないこと、さらにその中心にGoogleをはじめとするサービスプロバイダーが陣取っており、彼らがインターネットのさらなる興隆に資する、ドライバーとしての役割を担うという大きな可能性を感じているはずだ。

この辺示唆深いですね。NGNなんかが出てきて、インターネットの価値ってなんだろうと考えると、anyone-to-anyoneの自由な通信を実現するところだ、と、最近のエントリでも書いていますが、それは一重にインターネットに接続されるサービスなりアプリケーションが成功裏に存在してこそ、価値を体感できるものです。そして、この寄稿でも指摘されるように、先駆者たちは「次の世代」にこれらのイノベーションを託そうとしているように見えます。

あ、全然余談ですが、「次の世代に託そう」という言葉には「発話者は年寄りだ」という意味合いが見え隠れします。これは実物を見ないとなかなか気づかないことなのですが、Vintと別件で来日時にお会いしたFred Baker、このお二人は補聴器を使っています。軽くショックでした。このような先人の例を挙げずとも、日本の先駆者の皆さんの中にも、小さい字がかすむ人たちが多くなってきました。

1 generation == 30 years とする変換式があったりしますから、TCP/IPの開発が始まった頃からはほぼ一世代が過ぎたことになります。自分自身ももうすぐ40歳ですので、僕は僕なりの領域で、甘えていられない時代が来つつあることをジワジワと感じたりします。