JANOG20を振り返ってみる。

全然書かないまま5ヶ月が過ぎたが

いやぁ、見事に書かないものですね。未だ団体職員としての仕事のほうは、着任と同時に始まった枯渇ネタで埋め尽くされ、身動きが取れません。それ以前の生活が懐かしいですね。このままずるずる行くと、はてブロ引退か、みたいな感じになりそうですし、大きな節目であるということもありまして、JANOG20を振り返ってみようと思います。

JANOG20準備と意気込み

JANOG20、10周年興行ということでそもそも気合が入っていた。近藤邦昭会長は故郷帯広(正確には彼は芽室らしい)で開催する、と意気込んでいたが、僕はむしろ、区切りだからといって個人色を強めないほうがいいんじゃないの?なんてことを当初言っていた、そういえば。でも、他に明示的なホスティングオファーが来たわけでもないし、他の運営委員会全体としても反対意見が多かったわけでもなく、すんなり決まった。

また、特別企画ということで、木金のfull two days フォーマットの前日に、基調講演とパネルディスカッションを開催することに。伝家の宝刀といいますか、やっぱりあの人に来てもらわないといけないでしょう、といって招待に乗り出したのが、村井純さん。JANOGに来てもらったことなかったんです。

ご本人からもスライドの表紙に、「村井純@やっとJANOG」とクレジットしていただいたり、村井さんご自身としても「喜んで」として来ていただきました。ありがたい限りです。

もう一人は、初代会長、石黒邦宏さん。IP Infusion のCTOというか、Zebraの作者というか。

実行委員長をやってみたが。

JANOG19直後の運営委員会で実行委員会の布陣を決めるのだが、2つ思い切ったことを下のではないかと思っている。一つは僕自身を実行委員長==SCに据えたこと。もう一つは、発表者としては常連ながら実行委員の経験がなかった、まづーにプログラム委員長==PC Chairの一人をお願いしたということ。

僕自身の実行委員長、いやぁ、これは悔いが残る。全然JANOG20に気を回す暇がなく、水曜日の基調講演関係の担当者+木曜日の発表者としてのみ最低限動くことしかできなかった。相棒樽井君が二人分様々なフォローを打ってくれたからどうにかなったようなもんだ。

まづーのPC Chairはどうか。まずこれは、運営委員会の中での議論から思い出していたいのだが、実行委員経験のない人をPC Chairに据えるというのは、これまでになかったことだと思う。しかしながらそれは案外無理なく受け入れられた。僕自身の整理でいうと、彼の余りある「インターネット愛」「オペレーション愛」がこれを実現したのではないかと思う。PC Chairとしての仕事ではないとしても、「つぶらな瞳で」シリーズは、まづーなしには実現しなかっただろう。

組みあがったプログラムを見ると

JANOG20、多少10周年を意識したと言っても、大仕掛けをしたのは水曜日だけ、あとは江崎浩さんを金曜日に呼んだだけなのに、かなり「特別な」つくりになったように思う。つまり、

  • 水曜日の特別企画。村井純さんが登壇
  • 木曜日の「つぶらな瞳」シリーズ、省庁から初参加
  • 金曜日のRAMセッションには、浅羽登志也さん,加藤朗さん,Robert Raszuk氏が初参加, それに、水越一郎さん,河野美也さん
  • 金曜日のオペレーションセッションには、初参加の江崎浩さんに、創設JANOG運営委員の、荒野高志,石井秀雄,石黒邦宏の各氏。

また、10年間を振り返るような性質の話題がとても多かった。

当日の議論はどうだったか。

水曜日のパネル

モデレータだったが、事前に筋を通したりしているわけではないので、不安であった。しかし、あんずるより産むが安しというのか、議論は自己組織化して(?)勝手に収束して行った。そのうちJANOG20プログラムページでサマリが参照できるようになるが、トラフィック,ネットワークの規模・粒度両面で爆発的な拡張を遂げてきたインターネットは、今後まだスケールすることができるか。これに対する答えは、「自律分散ネットワークでは、他のコンポーネントを完全に知ることができない以上、予測はきわめて難しい。」。必要なことは、「detect」- 検知して明日の予見に役立てることだ、
というのが通底していた筋道で、それを彩るいろいろな要素 - HDTV, HDサウンド, ライブログ的超私的情報への需要,携帯やNGNも含めた「インターネット」の概念の拡張,コ・モビリティ,プローブ情報基盤,2つの方向のリアルワールドとサイバーワールドの地繋ぎ感...があった。

木曜のプログラムから

つぶらな瞳で総務省の高村さん、素晴らしかったです。ここまでJANOGのような現場から分かりやすい形で役所の仕事を説明して下される方は、今までにいなかった。もう一つのつぶらな瞳、警察庁の河石さんも相当ざっくばらんに語って下さってよかった。

枯渇セッションは、当初は説明ちょっと議論たくさんというつもりでいたけど、最終的にはアンケート結果やら、Randy BushがTWNIC OPMで喋った内容が示唆深かったりとかで取り上げていたら、議論に10分くらいしか取れなかった。それなりに情報整理としては機能していたという評価をいただいていたが、議論が足りないところが残念だった。一方で、「議論しろ」といって放り出しても大した積み上げにならなかったような気もするので、ま、ああいうのも形かもしれないと思う。

金曜のプログラムから

RAMセッション、残念ながらあんまりちゃんと聞くことができなかった。水越さん Lessigの話とかしてたけど、それはガバナンス方向に持って行きすぎだったのでは、とも思ったけど、でもこういう面子でルーティングアーキテクチャみたいな話をしているのを聞けるのはとてもいい機会だったのでないだろうか。
「インターネットオペレーションを語る」セッション、パネリストそれぞれの持ち味が発揮されていたセッションだったと思う。荒野さんのパート、実は10年前から一貫しておっしゃっていることなんだよね。なんでそんなに運用が偉いのかというと、運用の機転や才覚一つでネットワーク品質が変わるから(なんだけど、そんなもの電話網の設計をやってた人にはやっぱりオモチャにしか見えなかったり)。機械でできること、誰でもできることでは稼げないよねー、というのは、感じ悪く響きかねないけど事実だもんね。まづーのインターネット愛も大したもんだった。それにしても、あそこまで「人材」にフォーカスしたセッションもなかったんじゃないかな。

全体として

10周年にふさわしい内容となって、関わった張本人としてはいつにもまして満足度の高いミーティングでした。10年の運営委員生活に終止符を打つに余りあると言っていいと思います。
実行委員会の組織化や取りまわしという観点では、正直言ってJANOG19の方が精緻だし、とてもいい雰囲気だったと思います。たじーのような軽妙かつ着実なSCにはなれなかったし、「申し渡し事項」としてJANOG19のSCからもらっていたことも達成できていないです。orz
それでもなおかつ、JANOG20が充実していたのは、10周年仕立てとして仕掛けを大きくした、内容としても10年間を振り返り展望するという感じで節目っぽかったということもありますが、大テーマを豪華キャストでお届けして、あるいな「つぶらな瞳」シリーズのように新機軸を立てて、ドン、ドーンと配置できたところが大きいんじゃないかと思います。語るべき人に語ってもらうということが、やはり必要なんじゃないかと思いました。

去る身として

今後JANOGを担う運営委員会も、いつもミーティング実行委員をやってくれる皆さんも、もう安心してお任せできます。後は自分自身で動かして見返して、って感じでよくして行くだけだと思います。僕自身がJANOGに対してテーマだと思っていたことは、いくつかあるのですが全然まだまだ消化できていません。今後もツラツラと考えて行きたいと思います。

追記20070724

河野美也さんからコメントをいただいたが、ご自身のページでは以下のようなコメントが。

http://www.typepad.jp/t/trackback/104466/10038343

 それにしても今回のJanogでは、レッシグの言うところの「市場、規範、法、コード」を考えるネタが結構揃った。

*  市場=技術、サーヴィス、ビジネス
*  規範=コミュニティとそのあり方
*  法=総務省警察庁
*  コード=技術とアーキテクチャ

 関係者の皆さんに大大感謝。

なるほどー、そういう見方はしなかったが、確かにそうだー。
河野さん今後とも宜しくお願いします。mOm