IIJイノベーションインスティテュートに思う。

河野さんも年末にお書きになっているIIJイノベーションインスティテュート。

http://www.iij.ad.jp/innovation/

僕もプレスリリース見たときに、さすがIIJだなぁと唸ってしまった。

恥ずかしい話ながら、初めてIIJという会社名を伺ったとき、絶対Internet Initiativeという会社が外国(きっとインターネット先進国・米国)にあって、その現地法人だと思った。もちろん、訂正の必要もないほどに、IIJは純然たる日本の会社である。浅羽副社長からずいぶん昔に、IIJ立ち上げの頃の話として、

新しい会社にInternet Initiativeと名づけようと思う、と米国の友人に話したら、お願いだからJapanを付けてくれといわれた

なんて伺った記憶がある。もちろんインターネットのフロンティアが米国だったことは、特に10年以上前は誰も疑わないことであるが、PPP+Radiusダイアルアップの機構なんか、まともなもの作って使い出したのはIIJが世界初めてだったんじゃなかったっけな。そういえばiij-pppなんてものもあったし、イニシアティブを取りに行く会社なのである。

キャリアに比べれば小さい会社ながら、1998年には技術研究所としてR&D専従のセクションを設けてびっくりした。イノベーションインスティテュートも、新しい技術の創造という事業にリソースを投入するという意味では同じ線で、もっと大胆である。

枯渇問題検討で鈴木社長にお話を伺いに行ったとき、

IPv6IPv4アドレス枯渇の対策だ、っていうのはなんともつまらないよなぁ。技術が大変革を起こして、全く別のインターネットができるかも知れないんだよ?もっと夢を持ってやれるといいのになぁ。

みたいなことをおっしゃっていた。技術が大好きで、技術を信じていて、技術を信じる事業を続けるのに成功している方なんだなぁ、とつくづく感じた。

http://www.iij.ad.jp/innovation/issue/object.html
にはIIJの次世代インターネット像、的なものが示してある。「Web3.0」ってのがあるが、これだけはちょっとbuzzword過ぎではないかと思った。でも、Web2.0のように概念として次世代を語ったり社会学者が語る次世代像には枚挙の暇がないながら、ネットワーク事業者の視点から次世代インターネットの展望を示す書き物が出てくる機会はなかなかない。そのなかなかないものを見ることが出来たのが新鮮で、得るものもあり、そしてIIJらしいと思った。

ネットワーク事業者も次世代を語らないとつまらないと思うが、最近はネットワークで次世代というと、すぐにNGNになっちゃうところがあってまたまたつまらない。思えば2006年のIP Meetingで話したように、全てのトラフィックがインターネットを通るとは思わず、NGNのような閉域網が担う役割は今後大きくなるだろうと思う。だからこそ、インターネットだからワクワクするようなことが、もっともっとないとつまらない。そんなことがこのIIJイノベーションインスティテュートから巻き起こってくれないかと、とっても期待している。

遅ればせながら、Internetweek

インターネットウィークである。http://internetweek.jp/ もう1ヶ月以上前になってしまった。

主催者団体の職員となったが、、

JPNIC事務局専従となる時点でもう少し深く関与することになるのかと思いきや、ふたを開けてみるとやはり隣の部署が担当している仕事だし、自分の仕事は全然捌けないし、ということで普通のプログラム委員としての関与、という感じだった。しかも、まったくもって、出番以外でプログラムに参加することができなかった。

それでも主催者側的な視点でものを言うと、去年までのパシフィコ横浜を基調とした、チュートリアルも含めた大きな枠での開催を取りやめ、もう少しコンパクトに絞りこんで開催したい、というのが企画のスタート地点だった。ついでに言うなら、事務局の担当者も一新した。

だからプログラム編成も相当な自由度で、と思いきや、コンパクトにするという会場設定から入ると、プログラムを収める枠が自然と制限され、その中に入れないといけないものを入れ始めると、そこまで突拍子のないものもできない、という感じだったかも知れない。

企画当初に大方針として考えていたのは、IP Meetingを始めた当初のモチベーションみたいなものを、今の時代に合わせてどう表現するのか、といったことだった。「日本のインターネットを動かす上で共有しなければならないことを話し合う場」とでも言おうか。決まる過程に関与してはいないが、サブタイトルは「東京でディープに語る4日間」であった。「東京で」は、「パシフィコから秋葉原に移したよ」という意味として、「ディープに語る」には上のような意味合いが盛り込まれていると思う。

冒頭で述べたように自分の出番以外は見ていないから分からない。
自分の出番のうち火曜日の枯渇セッションとJPOPMは、どちらも事前に満席。無料なので"歩留まり"が気になったところだが、180人もの皆さんのご参加を、両セッションともいただいた。JPOPMとしては史上最多だったはずである。

IP Meeting/Internet Forum とそのパネルディスカッション

もう一つの出番は、IP Meeting/Internet Forum である。Internet Forumは、2006年4月のIETFフォーラム、2006年12月のIW2006では初日のIP Meetingと双璧をなす最終日の開催を経て、IP Meetingとのジョイントとなった。

パネルディスカッションは江崎浩さんがパネルチェア、他のIWセッションを担当したプログラム委員が7人の他に、総務省の谷脇康彦さんがご登壇。事前資料を寄稿なさった上で、IW各セッションの報告とともに、今後のインターネットを考えていこう、というものであった。

IWセッションのラインアップは、PKI, Enterprise 2.0, DNS, 著作権, 事業者と規制法制, アドレスポリシーと枯渇, 基盤ネット運営となっていて、これがプログラム委員会が考える「インターネットの構成要素」ということになるかもしれない。

このパネルに登壇したのだが、おそらく、僕が今までに登壇したパネルのなかで、もっとも口数が少なかったんじゃないかと思う。谷脇さんが投げかけた7つのテーマは、IWのラインアップであった7つと(たまたま数は合っているものの)一致しないということもあるが、もう少しメタというか、本質論のレベルを語っていらっしゃったような気がする。その一方で、IWなりIP Meeting/Internet Forumが「日本のインターネットを動かす上で共有しなければならないことを話し合う場」であるとすれば、そこの住民が谷脇さんの投げかけに答えられないというのも、本当であればおかしいはず。ちょっと悔しい気がした。

もう一つ、「インターネットの構成要素」が上のものとして、著作権, 事業者と規制法制が含まれているあたりが、とても象徴的なのではないかと思う。
利用者から見た「ネット」というものに比べると、我々が語る「インターネット」というのはまだまだ低位レイヤーのことだろう。今まで人と人がやりとりする言葉、あるいはコンテンツというものはover layer7の高位にあって、通信ネットワークにはほとんど関係しない独立したものであった。しかし、今はそういう切り分けが通用しない。
デジタルコンテンツは原理的にはコピー可能なのでネットワーク基盤の上にも滞留し得る。TCP/IPの制御系がユーザが持つPCにまで張り出しているから、IPアドレスやポート番号を初めとする、プロトコル上の制御情報も、ユーザが喋るものとして通信秘密に区分される、といった次第で、切り分けがクリアでなくなって来ている。

衆知のことではあるが、インターネットを動かすものが単に技術だけに留まらなくなってきていることを実感する次第。

遅ればせながら、IGF

最近あんまり書かなくて、、とか、ついつい言い訳がましい文句から書き出すことが多いなぁ。。結局大作を書こうとしているからダメなのかも知れない。

Internet Governance Forumである。初回であった2006年アテネ会合には参加して、そこそここちらにも書いた。
http://d.hatena.ne.jp/maem/20061112/p1
http://d.hatena.ne.jp/maem/20061113/p1
今回2007年のリオデジャネイロ会合、実はworkshopに登壇することが予定されていて、隙あらば出席したいと思っていたが、結局断念した。報道と伝聞に頼るばかりである。

日経デジタルコアのネット時評には、IGF Advisory Groupのメンバでもある富士通の加藤幹之さんの記事と、経団連ミッションのメンバーである日立の市川昭彦さんの記事が載っている。
人類共有のインターネットを議論・国連IGFリオデジャネイロ会議報告(前) 
人類共有のインターネットを議論・国連IGFリオデジャネイロ会議報告(後) 
インターネット「次の10億人」へ向け小型衛星携帯普及を――国連IGFに参加して

経団連ミッションといえば、レポートが出ている。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2007/107.html

cnetブログでは、経済産業省の村上敬亮さんが 3連発で現地レポートをお書きである。
「インターネットは空気のようなもの」ではない!? 〜IGF初日に参加して
IGF2日目雑感 〜 CIRとIPv6
IGF3日目雑感 〜 Cooperative Governance

村上さんの3日目のレポートから引用すると、

3. Multi−Stakeholoderということ

 こうした努力を続けていくと、ある意味、「会議のやりとりそのものは退屈」ということになってしまいがちです。しかし、感想がそこで止まってしまったら意味がない。こうした現実を、キャパシティビルディングの段階から含めて、みんなでコーディネートしながら進めていかなければいけない。だからこそ、マルチステークホールダー(複数の利害関係者)による会議という形式で、こうした取組を淡々と続けることに意味があるだと思います。これは、とても大切なことだと思います。

 「なんだ官民連携みたいな話か?」いった単純な理解の仕方をされたくない。そんな生やさしい御題とは、ちょっと現実が違うような気がします。今、日本は、こうした努力にフリーライドしているのではないでしょうか。

 そういう意味では、経団連団長でIGFアドバイザリーボードのメンバーをつとめる加藤さんや、なぜか日本代表のアドバイザリーボードメンバーであり、かつ裏方に徹して会議を支えているアダム・ピークさん、この世界に巻き込まれながら必死に勉強されてモデレータをされている今井さんといった方々の熱意と努力には、頭の下がる思いです。

 日本政府も、総務省を筆頭にIGFを支える努力を続けているわけですが、一個人として、もっと何が出来るかを真剣に考えないといけないなあ、と思いました。なんか、最後のところは優等生的ですけど。また、こうした社会の作り方自体が、一つの壮大な実験だし、そうした事を情飲み込んで会議をする国連というところも、ある意味、いろいろな経験を積んできた懐の深い組織なんだなと思いました。IGF全体のChairをしている国連のDesaiさんも人間的に本当に立派な方です。

これはアテネを見て僕もそう思ったことを、的確に書いてあると思った。国連がこういう会議に取り組むと言うこと自体凄いことで、デサイさんやクマーさんの情熱なしにはあり得ないのではないか。遠目に見て「何も結論ないじゃん、意味なくね?」と評してしまうのはフリーライダーの言うこと。生やさしくない問題にもがきながら苦しんで、何かを生み出そうとしているプロセスなんだろうと思う。

IPv4アドレス在庫枯渇問題に関する検討報告書(第一次)

これ以外のこと何かやったっけな、と思うほど今年はこれ一色だったような気がします。
着任が1月20日だったのですが、その直前のJANOG19ミーティングでは会場から本件検討の方向性の審議のために経営会議に電話参加していました。
6月19日の姿勢表明の直前はプレスリリース,総会の発表資料,Q&Aの準備でしたし、それが終わったら会議体の編成と取り回し。会議体の取り回しは検討それ自体に比べるとオーバーヘッドと言わざるを得ませんが、いろいろな層の皆さんに納得していただきながら物事を進めるためには必要だと思いました。

ワーキンググループでの検討から、この報告書に入りきらなかったことは山ほどあります。今後の検討に活かさないとバチが当たりそうです。諮問委員会の委員の皆さんからは、期待したとおりの示唆深いご指摘をいただきました。さすが第一人者の方々です。WGも諮問委も、限られた人数の人選はやはり苦労するのですが、一生懸命やったことが、ちゃんと結果に戻ってくる気がしました。

目新しいことがあまりないと評されることもありますが、今まで積み上がらない議論で終始していたIPv4アドレス在庫枯渇の問題をひとかたまり検討して、外堀を埋めてIPv6の導入を推進するべきなのだ、という方向性を打ち出すところまで論じたことの意義は大きいのではないかと思います。

JPNIC会員アンケート(報告書67ページから)の結果から、多くの事業者の皆さんはIPv6の対応をしなければならないことは薄々お気づきながら、納得まではしていない+何をどう進めれば分からない、という状況にお見受けします。そういう方々に、ひとかたまりの議論を提示するのは重要なことだろうと思います。

とりあえずリリースに当たって思うことを一通り書きました。まだまだ思うところがありますが、思い出すたびに書きたいと思っています。


金曜夕方のリリース以来、既にWeb媒体ではいくつか取り上げていただいています。ありがとうございます。

。。。ググればいろいろ当たりますね。失礼しました。


スラドもね。


で、JPNIC Webにおける参照先はこちら。

itojunさん追悼

突然の訃報でした。mixiでも業界のマイミク皆さん日記でそのことに触れる状況ですし、世界中様々なメーリングリストで話題に上がっています。改めて業績と影響力の大きさ、そして人柄の良さを思い知ります。

WIDEの追悼記事 - http://www.wide.ad.jp/news/press/20071031-itojun-j.html
クロサカタツヤのCNET Blog - http://blog.japan.cnet.com/kurosaka/a/2007/11/itojun.html

http://www.itojun.org/ を見ると、今でも息遣いが聞こえてきそうです。

近況 - IPv4アドレス在庫枯渇で、自分のリソースも枯渇

JPNICIPv4アドレス枯渇に関する検討が大詰め。12月7日の総会で公開する報告書の作成に追われています。考えてみれば枯渇に関してこっちで何も書いていないんですね。びっくり。マズいくらいですね。

とりあえずJPNICのWebを中心に手繰れる情報をリンクとして。

英さんの「次世代インターネットを探る」

山口英さんが語り、クロサカタツヤさんがテキストにした「次世代インターネットを探る」読み応えあります。
http://www.ipv6style.jp/jp/20070730/ngin02.html
http://www.ipv6style.jp/jp/20070806/ngin03.html
この内容は英さんじゃないと聞けないし、それが的確にテキストに落ちているのはクロサカさんならでと思いました。